離婚公正証書は公証人が作成する公文書であり、双方が合意する契約書ですが、どんな内容でも書けるわけではありません。公序良俗に反する内容は書くことができません。公序良俗とは、公の秩序や善良な風俗、つまり社会の一般的な道徳観念を指します。公序良俗に違反する法律行為は無効とされます。
離婚の公正証書に書けないこと
具体的には、人倫に反する内容(例:母と子どもが同居しない契約や妻と離婚して結婚する予約)、正義の観念に反する内容(例:犯罪や不正行為をする契約、対価を与えて悪事をさせない契約)、他人の無思慮や窮迫に乗じて不当な利益を得る行為、個人の自由や営業の自由を極度に制限するもの、また法律上許容されていない賭博など著しく射幸的なものは、公序良俗に反するとされます。
たとえお互いが合意していても、盗んで養育費を支払うことや払えないほどの慰謝料の提示、慰謝料が遅れた場合に法外な利息を請求すること、子どもに会わせないことなど、公序良俗に反すると判断される内容は、離婚公正証書に記載することはできません。
- 養育費を支払わない合意: 養育費は子どもの権利であり、子どもから請求できます。
- 養育費の額の変更をしない: 物価や収入の変動等により、養育費の金額変更が可能です。
- 子どもとの面会を認めない: 面会は親と子ども双方の権利であり、「子どもとの面会を認めない」と記載できません。
- 養育費が滞ったら、子どもとの面会をさせない: 面会交流と養育費は別のことであり、この条件を記載できません。
- 離婚時年金分割の請求をしない: 年金分割は公的請求権であり、記載できません。
- 利息制限法を超える金利: 金利は法律で決められており、超える金利は記載できません。
- 公序良俗に違反することや違法なこと: これらは記載できません。
離婚公正証書で決める事とは
離婚の公正証書には、主に以下の3つの内容が含まれます。
財産分与について
離婚時に夫婦が築いた財産を分けて清算します。これを「財産分与」といいます。家や家具、車などは売却して現金化し、基本的に半分ずつ分けます。ただし、結婚前から所有している財産は分与の対象外です。
養育費について
子どもが成長し自立できるまで、親は子どもを扶養する義務があります。離婚後、子どもを引き取る親に対して、もう一方の親は養育費を支払わなければなりません。これには生活費や教育費、医療費などが含まれます。夫婦で話し合い、公平な金額を決めます。
慰謝料について
離婚の主な原因がある場合、原因を作った側が慰謝料を支払います。これは精神的損害に対する賠償です。離婚原因としては不倫、暴力、借金の問題などが挙げられます。慰謝料の額は一般的に数十万円から五百万円程度で、夫婦が話し合いで決定します。公正証書に慰謝料の額を明記しておくことが重要です。
離婚公正証書にしておくメリット
離婚公正証書にはいくつかのメリットがあります。まず、公正証書には強制力があるため、金銭の支払いを約束したにもかかわらず、支払う側が約束通りに支払わない場合、支払いを受ける側は裁判を経ずに強制執行を行うことができます。これにより、時間と費用を節約することができます。
また、公正証書により、離婚後に支払い義務が残るもの(例えば、養育費)についても、支払いの確保がしやすくなります。養育費の取り決めを公正証書にしておくと、支払いが滞った場合に、給与差押えを行って養育費を回収することが可能になります。
公正証書には強制力がある
さらに、公正証書は心理的な強制力も持っています。口頭での約束だけでは、支払う側が支払いを怠る可能性がありますが、公正証書にすることで、支払う側に「言い逃れができない」という意識や「支払わなければ差押えされる」というプレッシャーを与えることができます。その結果、約束通りに支払いが行われる確率が高くなります。
つまり、離婚公正証書には強制力があり、支払いの確保がしやすくなるだけでなく、心理的な強制力も持っているため、作成しておくことには大きなメリットがあると言えます。
離婚公正証書の効力について
法律の観点から判断が難しい場合や、公証人によって記載の可否が異なることがあるため、離婚の公正証書に関して自分で判断ができない場合は、専門家に相談することをお勧めします。
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